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「京を創る」という公募は、京都の伝統的な環境(お寺、など)に現代美術のインスタレーションを生かし、今年で10年目になった。今回は、京都の東である醍醐寺が展示場所として選ばれ、私がその中、醍醐の五重塔の庭(テイ)を製作場として選んだ。塔が立派な建造物であり(952年完成、京都府の最古木造建造物である)、直立的、幾何学的、陽的である。その庭(テイ)の空間には、非常にシンプルな水平的、有機的、隠的なものを加え、作品を作りたかった。その作品は、その庭(テイ)から生まれ、そこで有るべきもを目指したが、どこかで、全く新しいものにもなれなければならないと思った。それで、私が昔から好き、よく使ったオメガ(Ω)という文字が思い浮かび、「OmegaPoint・オメガポイント」という作品を設計しながら、下記のストーリが展開した。 Philosophy ・ フィロソフィー オメガ(Ω)は、ギリシア語の最終字母である。第一字母のアルファ(Α)と一緒に並ぶと、梵語「阿吽」(あ‐うん)と同じく、万物の初めと終りを象徴する。即ち、森羅万象を結合する創造サイクルを表わす文字である。「オメガ・ポイント」を哲学として構築したのは、フランス人のカトリック教会神父、ピエール・テェハー・デュ・シャルディン氏(1881-1955)であった。デュ・シャルディン氏の説によると、地球上の命は、バイオスフェア、即ち、地球を巻き込む生物圏ではじまる。次の段階として、ノオスフェアという、コンシャスネス(意識)の圏が発生する。人類意識が代表する、そのノオスフェアが、次第に複雑な社会的組織により成長し、最終的には、物資や思想を乗り越えたスーパーコンシャスネス(超意識)を生み出す。このスーパーコンシャスネスを、彼は「オメガ・ポイント」と名付けた。デュ・シャルディン氏の理念はキリスト教とダーウィン説によって出来たのだが、佛教の最終目的、「悟り」と相似しているとは言えないだろうか。 Global Connectivity ・ 世界の連続性 「オメガ・ポイント」が表現する、もう一つの様相は、「世界の連続性」であり、21世紀のグローバライゼイション(世界化)に非常に適わしいイメージである。これは、古代史や現代史の中に見える。例えば古代の場合、世界初の仏像は、ガンダーラ地方(現在のパキスタン)のクシャーナ朝時代(1世紀後半〜3世紀)に現われる。その時、インドでは、仏像の文化はなかったので、当時のカニシカ王が、ギリシアからの彫刻家を呼び入れた。そのお陰で、世界最初の仏像はどちらかというと、ギリシア人の姿に見える。今回提案する「オメガ・ポイント」には、日本の五重塔がオメガの字(Ω)の内にある「池」(砂利の波紋で表現している)に反射し、古代と現代、または、文化的、技術的な、世界を結ぶ様々なリンク(連続)を想起させることを意図している。 Spatial Design ・ 空間デザイン 古代中国に由来する陰陽五行説という易学によると、陰と陽との二種の相反する性質をもつ「気」があり、その二気の消長によって万物の生成が出来る。日月、南北、昼夜、男女などの性質は陽と陰で表わせる。大自然の元素の中で、「陽」を象徴するものは、固体的、永久的、垂直的な「山」であり、「陰」を象徴するものは、液体的、瞬間的、水平的な「水」である。そのため、「大自然」は「山水」と呼ばれるようになった。しかし、文明の発達と共に、自然の「山」が人工の「塔」に入れ替わり、自然の垂直な様相を表現しながら、人類の技術力も表現するようになった。同じ例には、古代メソポタミアの「ジッグラト」、インドの「卒塔婆](stupa)と中国や日本の「仏塔」がある。醍醐寺の「オメガ・ポイント」には、垂直、陽的な五重塔を、水平、陰的なオメガに移り、対比させながら、調和を図るものである。 「オメガ・ポイント」は、2000年公募「京を作る」の大賞を受賞しました。マーク・ピーター・キーンは、1985年来日、それ以来、庭園設計、庭園作家(Japanese Garden Design, Sakuteiki 英訳解説版)、または講師(京都造形芸術大学)として活動している。 |